史上最も影響力の大きいエンターテイナーであるマイケル・ジャクソンの名声は、彼を巡る論争とスキャンダルに汚されてきました。しかし、この「キング・オブ・ポップ」に関する新刊がそうした傾向に変化をもたらそうとしています。

「この本を出すことでマイケルの名声の原点である彼の音楽に議論を戻す手助けができればと思ったんです」と、『マイケル・ジャクソン コンプリートワークス』(ティー・オーエンタテイメント、2012年、原題:Man in the Music: The Creative Life and Work of Michael Jackson)の著者であり、ロチェスター大学文学研究科博士候補生のジョセフ・ヴォーゲル氏は言います。

本書は1979年の『オフ・ザ・ウォール』から2009年の死去までに作られたマイケル・ジャクソンのソロ時代全曲を解説したものです。マイケルの遺品資料、本人の証言やこれまで語られることのなかった証言を含む関係者のインタビューなどあらゆる資料を駆使することで、ヴォーゲル氏はひとつひとつの楽曲やアルバムの制作過程を解明しています。

国内メディアの好意的な評価に加え、本書は映画監督であるスパイク・リー氏の目に留まることになりました。

「ヴォーゲル氏はマイケル・ジョセフ・ジャクソンのDNA、作品の特質、芸術性を見事に解明しました。私は"芸術性"という言葉を強調しておきたい。なぜなら人々はそれこそがマイケルの本質であり、彼が休むことなく取り組んだものだということを忘れてしまうか、決して理解しようとしなかったからです。マイケルの素晴らしい作品群の鋭く、かつ知的な分析―これこそ私が長年待ち望んでいた本です。ヴォーゲル氏はアルバムの一枚一枚、一曲一曲にいたるまで解説してくれています。」

本書を読んだリー氏は支援の申し出を行うためにヴォーゲル氏に直接連絡を取り、ニューヨーク大学大学院で彼が教える映画学講義での講演を依頼しました。その他にもヴォーゲル氏にはポピュラー文化やアフリカ系アメリカ学、音楽論などに関する授業向けの教科書に使いたいという研究者たちからの好意的な反応が寄せられています。

「マイケル・ジャクソンの音楽には常に魅了されてきました。しかし、彼の与えた文化的影響を考えると、彼の作品群に関する情報の少なさは驚きに値します。」現在、マイケルについて書かれるもののほとんどはファンが思い入れたっぷりに称賛するものかタブロイド的な「暴露本」のどちらかになっているのが現状だとヴォーゲル氏は言います。

ヴォーゲル氏が執筆を開始した2005年にはマイケルの児童性的虐待及びその他の容疑に関する裁判が行われており、彼の容姿から子供たちにいたるまで、マイケルに対するありとあらゆる中傷が裁判に関する憶測に便乗して行われていました。後にマイケルはすべての容疑に対して無罪となります。

「当初は物書きとしての経験を活かして彼の歌を分析する本にしようと思っていました。しかし、特に彼の死後、 彼の音楽が置かれた文脈を理解し、創作過程について知ることで、歴史を記録するという側面も加わるようになりました」とヴォーゲル氏は言い、本書を「一般向け書籍と専門書の中間くらい」と説明しています。

ヴォーゲル氏はハフィントン・ポストに音楽、ポピュラー文化、政治について寄稿しており、これまでに自身の回想録『Free Speech 101: The Utah Valley Uproar over Michael Moore』や『The Obama Movement: Why Barak Obama Speaks to America's Youth』など三冊の著書があります。現在、ロチェスター大学のカレッジ・ライティング・プログラムで講師を務める傍ら、文学研究科博士候補生として、20世紀アメリカ文学、ポピュラー音楽・文化、ロマン主義の研究を行っています。

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ロチェスター大学について

ロチェスター大学(www.rochester.edu)はアメリカを代表する私立大学のひとつです。ニューヨーク州ロチェスターに位置し、クラスター制のユニークなカリキュラムを通じて領域横断的な学習環境と教員による緊密な指導を提供しています。カレッジ・オブ・アーツ・サイエンシーズ・アンド・エンジニアリング(College of Arts, Sciences, and Engineering)の他にイーストマン音楽学校、サイモン・ビジネス・スクール、ウォーナー教職大学院、レーザーエネルギー研究所、薬学・歯学部・看護学の専門職課程、メモリアル・アート・ギャラリーによって構成されています。